2024年07月16日( 火 )

旧統一教会被害者救済の新法案をめぐり与野党攻防激化(後)

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 司会役の山井和則衆院議員がこう補足した。「そういう意味で今日のヒアリングは非常に重要です。自公の党首会談で『新法を出す』と表明されるようだが、その出てくる新法が中野さんのように念書を書かれる(旧・統一教会の)手法に対して取消しに有効なのかどうか。新法を出したが、『今の被害者は対象外』では意味がないので、中野さんのケースが救済できるような法律をつくれるのかどうかが問われている」

国対ヒアリングの司会者の山井和則衆院議員
国対ヒアリングの司会者の山井和則衆院議員

    この念書は「献金は私が自由意思によって行ったものであり、違法・不当な働きかけによって行ったものではありません」という内容で、半年後に認知症と診断された母親(当時86歳)が署名。しかし中野さんは「正常な判断ができないところにつけこまれた」と反論、返金を求める損害賠償請求訴訟を今でも続けている経過を野党議員に説明していったのだ。

 「私は60代です。私自身は信者であったことはありません。2015年に突然、当時86歳の母が旧統一教会の被害を受けていることが発覚して、そのときに年金以外には何も預金などはなく、しかもすでに認知症を発症していると思われたことから「何とか母を助けないといけない」と思って訴訟をしてきました。全弁連の木村壮弁護士と山口広弁護士にお願いをして7年以上が経過しましたが、まだ救済が得られていないという状況です」。

 そして配布されたレジメを基に説明した中野さんはこう締め括った。

 「母を助けるために裁判提起やむなしになったときにも、裁判費用の捻出に困るほど母はお金をもっていませんでした。両親は不正なやり方で金融財産を収奪され、大切な果樹園を売却させられました。その上、老いの衰えが見え始めた母から不起訴合意の念書を取り付け、それを教会に提出する様子を動画に撮影する。母は三重に人権侵害を受けました。あたかも高齢者詐欺のようで、これが宗教団体のすることとは思えません」「統一教会にはいわゆる自浄作用など絶対にないことがわかります。悪質な高額献金を規制する被害者救済の法整備が一日も早くなされ、両親のような被害者がなくなることを、同時に統一教会が解散されることを心から望みます」。

 これを受けて山井議員は「酷悪非道なやり方ではないか」と切り出しながら、同じ時間帯に開かれた岸田首相会見の発言をこう紹介した。

 「悪質な献金・被害者救済の新規立法について総力をあげて検討してまいりました。与野党協議の内容を踏まえて、政府としては今国会を視野にできる限り早く法案を国会に提出すべく最大限の努力を行うことといたします。その際に消費者契約法の対象にならない寄付一般について社会的に許容しがたい悪質な勧誘行為を禁止すること。そして悪質な勧誘行為に基づく寄付について損害賠償請求を可能とすること。また子や配偶者に生じた被害の救済を可能とすることなどを主な内容として検討してまいります」「与野党の協力を受けてできる限り、早期の法案成立に至るよう努力をしてまいります」。

 この首相発言を読み上げたうえで山井議員は、訴訟担当として中野さんの隣に座っていた木村壮弁護士に「中野さんの母親の献金は、社会的に許容しがたい悪質な勧誘行為に基づく寄付に当たるのでしょうか」と尋ねると、こんな回答が返ってきた。

 「中野さんの被害が、社会的に許容しがたい悪質な勧誘に当たるのかと言われば、私は当たると思います。当たると思いますが、『社会的に許容しがたい悪質な勧誘』の意味がはっきりしないので、一般論としては『当たる』と思いますが、『当たらない』と判断される可能性も十分にある」「いわゆるマインドコントロール下にある献金を救済できるようなものになるのか。本当に条文に入るようなものになるのかどうかはまだ分からない」(木村弁護士)。

 結局、政府案の条文が出て来ない限りは判断がしようがないということだ。長妻氏が条文を早く出すように求めているのはこのためだ。新規立法への意気込みを長妻氏は最後に語った。
「『こういう日本人を食いものにするような行為が放置されていることこそ、法治国家としていかがなものか』と思う。与党政府も条文を出して我々(野党)とすりあわせる。我々も『条文を一字一句変えない』という頑なな態度ではないので、より良い新法をつくって二度と日本人が食いものにならない社会をつくりたいと思う」

 高額献金規制・被害者救済の新規立法をめぐる今後の与野党協議や国会審議が注目される。

(了)

【ジャーナリスト/横田 一】

(前)

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