【トップインタビュー】水産を原点に世界の海で挑む 時代に合わせ変化し成長を続ける
(株)トクスイコーポレーション
代表取締役会長 徳島建征 氏
(株)トクスイコーポレーションが海外で挑戦を続けている。以西底引網業の時代には自社漁船で世界各地の海を渡ったが、事業環境の変化を受け早期にインドネシアに合弁会社を設立するなど新規事業に着手。現在は海外で水産物を仕入れ、加工・販売する商社型へ転換をはたすとともに、食品など周辺領域にも事業を拡大している。徳島建征代表取締役会長は「海外には中小企業が先行者メリットを得られる好機がある」と挑戦を呼びかける。
(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役会長 児玉直)
早期に海外に進出
代表取締役会長 徳島建征 氏
──海外ビジネスは、日本市場の限界を見据えての開拓だったのでしょうか。
徳島建征氏(以下、徳島) 実は、「魚を獲る場所」の問題でした。私たちの歴史は徳島の日和佐という小さな漁村から始まり、五島列島を経て、1934年、福岡市の誘致を受けて来ました。当時は以西底引網漁が中心で、戦後にかけて技術の向上もあって漁獲量が増えましたが、底引網は根こそぎ獲るために環境負荷も大きく、大陸棚の資源の枯渇という問題が生じました。日本近海での競争の激化もあり、世界に漁場を求めたのです。
地中海、北太平洋、オーストラリア、インドネシアと、文字通り世界中の海へマグロやタラ、エビを求めて展開しました。しかし、各国が安全保障や資源保護を重視するなかで、外国船が操業できる海域は減少し、最終的に漁業として残ったのがインドネシアでした。
かつては自ら船を出す漁師の会社でしたが、現在は海外の漁師から買い付けて加工・販売する商社のようになっています。エビを除き自社で船を出すことはほぼなく、インドネシアで獲った水産物を日本や他国へ売るのが主力です。米国ではアラスカの水産会社を買収し、売上を10億円規模から200億円規模にまで成長させたこともあります。
原点・水産業へのこだわり
──75年ごろは以西底引網の業者だけでも50社以上ありましたが、ほとんど残っていません。
徳島 そのころから業者の淘汰が進みました。91年には、増田さん(現・増田石油(株))と当社が同じ日に底引網をやめるということもありました。
──陸(おか)に上がって生き残ったところも、業態を大きく変えています。たとえば、富永さん(福岡運輸(株))は運送倉庫業、増田さんは石油販売業に変わっています。廣田商事(株)は不動産業をメインとするかたわら、スタートアップのインキュベーションビルを運営するなど面白いビジネスモデルを構築しています。
徳島 富永さんは、もともと私と同じ流れを汲む家系ですが、戦後、今の運送倉庫業に至る新しいモデルを開発されました。発祥であるビジネスにこだわっているのは、当社グループなどわずかです。
──それは漁業やその関連事業を貫こうという強い想いがあったのでしょうか。
徳島 漁業を軸に据え、残せるものは残そうと取り組んできました。自社で船を出す「漁師」から、海外から買い付けて加工・販売する「商社」へと、時代に合わせてかたちは変えていますが、魚という原点からは離れていません。
──周辺のサプライチェーンも強化されました。
徳島 水産資源とお客さまの間にどのような価値をつくれるかと考え、食品卸や冷凍・物流といったサプライチェーンの高度化を進めました。かつては缶詰やかき氷などBtoCのメーカーとして高いシェアをもっていた時期もあります。
──周辺事業も競合が激しくなったのではないですか。
徳島 どの分野でも最終的には競争が激しくなります。そのなかで「選択と集中」を行ってきた結果、一時は事業領域が狭まったように感じたこともありました。しかし原点であり得意分野である水産で世界に挑戦し続けることが生き残る道だと考えています。
今こそ先手必勝の機会
──福岡商工会議所が1月末から実施したインド視察に参加されて、いかがでしたか。
徳島 ベンガルールを10年前に訪問した際、もっとキラキラしたイメージを抱いたのですが、再訪して変化の大きさに驚きました。すさまじい渋滞とクラクションの音で、まさに「カオス」でした。しかし、このカオスの勢いこそが今のインドを象徴しています。ビジネス環境についていえば、以前は「信用できない」と見られていましたが、今は欧米的なルールや契約を守る「普通の商売」ができる組織的な土壌が整いつつあると感じました。
──その後ベトナムも視察されたとのことですが、インドと比較してどうですか。
徳島 ベトナムはインドと比べ信号機が多いなど、社会インフラの整備がインドより10年進んでいる印象を受けました。社会主義国であるものの非常に自由な雰囲気で、韓国企業が大量に進出していることからも、事業を行いやすい市場に見えます。一方インドはカースト制度などの壁もありますが、今の経済発展の段階は、中小企業にとっても「先行者メリット」を得られるチャンスがある時期だといえます。
日本は少子高齢化で市場が縮小し、競争が激しくなる一方ですが、世界に目を向ければ、選択肢と可能性は確実に広がります。私は福岡商工会議所の食料・水産部会長を務めていますが、商工会議所としても、中小企業の経営者に可能性を感じてもらえるような、きめ細やかな視察やニーズの掘り起こしをすることが必要だと考えています。インドのような国が中進国へと発展に向かう今こそ、トライすべき時機だと思います。
【文・構成:茅野雅弘】
<PROFILE>
徳島建征(とくしま・たてゆき)
1970年8月生まれ。福岡市出身。米ワシントン州ベルビュー・カレッジ教養学部卒。2004年(株)トクスイコーポレーション入社。10年に代表取締役社長就任。24年9月から代表取締役会長。23年11月から福岡商工会議所食料・水産部会部会長を務める。








