2024年12月22日( 日 )

リアルの売り場をイノベーションで刷新 失地回復を図り、新たな需要も喚起(前)

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リアルとネットがせめぎ合うなかで、イオンは国内最大の売り場を有するリアルの雄である。近年、新たな手法で売り場や品ぞろえの拡充に取り組み、商品開発にも力を入れ、競争力を高めて、今までユニクロ、ニトリ、ドラッグストア、コンビニに侵食されたマーケットシェアを奪い返そうと反撃に転じている。

GMSは足を引っ張り、SMは利益貢献できず

 イオンはGMSを始め、SM、ディスカウントストア、コンビニ、専門店など、2万店以上のネットワークを誇る。GMS事業は3兆806億円、SM事業は3兆3,250億円と営業収益の75%近くを占めるが、営業利益ではGMSは115億円、SMは251億円で、全体の2割にも達しない(18年2月期)。

 さらに今上期は、GMS事業は75億円の赤字に転落、ダイエー、マックスバリュ西日本などのSM事業も営業利益率は28億円と前年より大きく落ち込んだ。

 両部門は分母こそ大きいが、利益面では、イオン銀行、イオンクレジットなどの総合金融事業346億円が全体の約36%、イオンモールを始めとするデベロッパー事業は282億円で約30%と2事業が収益の両輪となっている。

 ドラッグストアのウエルシアなどヘルス&ウエルネス事業と、サービス・専門店事業もそれぞれ約17%と、4事業で利益の大半を稼ぎ出す構造になっており、GMSは足を引っ張り、SMは利益に貢献できないでいる。

売り場の専門化により専門店に奪われたシェアを奪還

 主力事業の立て直しは急がれるが、とりわけGMSにおいては不振から抜け出るために、新たな改革を進めようとしており、さらなる進化に向けて、近年、取り組みを強めて反転攻勢に打って出ようとしている。

 主要な取り組みの1つが酒「イオンリカー」や自転車「イオンバイク」、手芸・ホビー「パンドラハウス」などに見られる売り場の専門化。専門店として品ぞろえや売り場づくりを深化させ、住関連と衣料品の再生を図り、新たな成長に向けた抜本的改革を加速させている。

 最近は1つの単位を「ユニット」と呼んでおり、多数のユニットを開発、とくに規模の大きいメガユニットの展開に力を入れており、キッズ・ベビー・玩具「キッズリパブリック」、ホームファッション「ホームコーディ」、ヘルス&ビューティー「グラムビューティーク」、カジュアルインナー「インナーカジュアル」の4つの業態だ。

SPAのライフスタイル型の「ホームコーディ」でニトリに対抗

SPAのライフスタイル型の「ホームコーディ」

 ホームコーディは実は1985年から展開している歴史のあるPB(プライベートブランド)。今までは鳴かず飛ばずの状態だったが、2016年11月、開発体制を一本化し、「価格」「機能」「素材」をキーワードに、カラーにこだわりバリエーションも豊富にそろえ、コーディネートを重視、トレンドに対応しながら機能性の打ち出しを図る、ライフスタイル型のブランドに刷新された。

 寝具、家具、インテリア、履物、タオル、ダイニングキッチン、ランドリー、ハウスクリーニング、収納のカテゴリーを網羅し、1,000品目からスタートし、開発が進み、現在は約7,000品目を展開している。

 商品の企画・開発から製造、物流、販売まで一貫して手がけるSPA(製造小売)で、コストを抑えて、低価格で商品を提供している。

 ブランドのコンセプトは、「シンプルで飽きの来ないデザインで長く使えるもの」。開発に際してターゲットはとくに絞り込んでいないが、シニアの使用を想定し、履物で高齢者のニーズが高い小さめのSサイズを充実させるなど、消費者視点を重視している。

 ホームコーディの商品は、店舗によって取り扱い商品は異なるが、イオンの全店舗に導入され、売り場のエンドでカテゴリーを越えてクロスMDを展開、「ホームコーディウィーク」や体験型イベントを開催し、アピール度を高めて来店客に浸透を図ろうとしている。

 17年3月には、神戸の「三宮オーパ2」に、専門店として「ホームコーディ」を420坪の規模で出店、現在、38店舗を出店、売り場として展開しているところは約380店舗まで拡大している。

 ホームコーディは消費者のニーズと乖離した隙間を埋め、再び需要を取り込む狙いがあるが、収益性の向上も大きな目的の1つ。利益率の高いSPA型にすることで実現しようとしているが、先行するニトリの荒利益率は50%を超えており、イオンの30%に達していない(ヘルス&ビューティを含む)状況からすればたしかに、伸びしろは大きい。ただ、生産段階での発注精度の向上や物流の効率化など取り組むべき課題も多く、より一層の改善も必要とされる。

 生活者に支持される商品を確実に送り出せるよう商品開発を強化し、提案できる売り場づくりを行い、住まいの生活シーンでいの一番に選ばれるブランド、ショップになれるか、ブランディング戦略も重要となる。

(つづく)

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