2024年12月26日( 木 )

コロナ第三波、菅首相・小池知事の“A級戦犯コンビ”を問いただす

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責任をなすりつけ合う首相と都知事

 コロナ第三波の爆発的感染拡大で、お互い責任をなすりつけ合っている菅義偉首相と小池百合子知事の“A級戦犯”ぶりが際立っている。

 緊急事態宣言の再発令から6日後の1月13日、東京都医師会の尾崎治夫会長は新年初の定例会見で「(医療体制は)ほとんど限界に近い」、「第一波とは比べものにならない」と危機的状況を訴えたうえで、「強力なメッセージを政府の方に出していただきたい」と注文をつけた。これまでの菅政権の対応を問題視したかたちだが、たしかに大胆な対策を即断即決しない菅政権(首相)の無為無策の対応は目に余るものがあった。

 尾崎会長が会見でGoToキャンペーン中断(東京除外)を訴えたのは11月20日。しかし10日以上も経った12月1日に菅首相と小池知事がトップ会談をして合意したのは、高齢者と基礎疾患がある人への自粛呼びかけにすぎなかった。

 「あまりに遅くて小さい(too little,too late)」で事足りたことについて、12月8日の会見で「11月20日にGoToキャンペーン中断を訴えられたのに、12月1日にGoToトラベル東京除外については高齢者と持病持ちの人への自粛にとどまった。どうみているのか」と聞くと、尾崎会長は次のように答えた。

 「活発に動く若い人を中心に無症状者が多いわけだから、感染が広がって家庭内の高齢者に持ち込むとか、GoToトラベルで目的地に行ったらみんなでワイワイ騒ぐことになるので、すべての年代で旅行を止めていただくのが効果的だと思うので、そこに至っていないことについては残念だと思う」。

 「残念」と思っていたのは尾崎会長だけではない。政府のコロナ対策分科会の尾身茂会長も、GoToトラベル停止の決断に時間を要した理由の一つを「国と東京都の『両すくみ』に陥ったこと」と指摘。「菅首相は当初から『まずは知事に判断していただく』と言い、小池知事は『国が判断を』と言う」と責任のなすりつけ合いを問題視したうえで、唖然とした瞬間をこう振り返っていた。

 「大きな注目が集まった12月1日のトップ会談では、私たち専門家は皆強いメッセージが出ることを期待していました。二人の会談の直後に『65歳以上の高齢者と基礎疾患のある人に利用自粛を呼びかける』という合意がなされたと聞いたときは、『え?』と言葉を失いました。私たちの具申をわかってくれていなかったのか、と強い違和感があった」(文藝春秋2月号の「尾身茂『東京を抑えなければ感染は終わらない』」より)。

 菅首相と共同責任を負うべき、もう一人の“A級戦犯”である小池知事も、GoToトラベルの中断が遅れたことへの反省も謝罪もしていない。しかも、都知事会見で厳しく問いただされる場面も皆無だった。そこで緊急事態宣言が発令された1月7日の臨時会見で、3年間も質問者として指されない“記者排除”への抗議も兼ねて、次のような声掛け質問をした。

 「菅さんとの不仲が問題だったのではないか。(菅首相との)責任のなすりつけ合い、謝罪しないか。GoTo(トラベル)キャンペーン、なぜ中断要請しなかったのか」、「反省しないのか」。

 しかし小池知事はこの日も、私の問い掛けに対して一言も発しないまま、会見場から足早に立ち去った。

「仲直り」してたったこれだけ?

 「GoTo中断」について小池知事に声掛け質問をしたのは、1月7日が初めてではない。先の尾崎会長が緊急会見でGoTo中断を訴えた11月20日以降、何度も小池知事に向かって大声を張り上げていた。11月20日の都知事会見でも終了直後、こう叫んだ。

 「菅さんにGoToキャンペーン中断、申し入れないのか。(9月30日までの)東京除外しているときより感染者数、増えているではないか。見て見ぬふりをするのか。(菅さんが官房長官から)総理大臣になったらものを言わなくなったのか。言いなりか」。

 小池知事が菅首相と会談をした11月24日の翌25日の臨時会見でも、GoTo中断を申し入れなかったことへの問題提起として、「GoToトラベル、国に丸投げでいいのか。無責任ではないか。職務怠慢ではないか。全国に感染を広げることになるのではないか」と問いただす声掛けをした。

 三度目は、大阪市と札幌市のGoTo除外が決まった3日後の11月27日。ここでは「菅さんが嫌いだからGoTo中断を言わないのか。(全国に)感染拡大をさせていいのか。無責任ではないか」と両トップの不仲説を取り上げた声掛け質問をした。

 小池知事が12月1日に菅首相との二度目のトップ会談をした3日後の4日には、こんな疑問をぶつけた。

 「(GoToは)高齢者自粛だけでは不十分ではないか。専門家、医療関係者、批判しているではないか。菅総理と仲直りをして、この程度の対策しか出せないのか。不仲説解消の記事は本当か。(菅首相と小池知事の)ホットラインは本当にあるのか。菅首相と何と話したのか」。

 ここで不仲説について触れたのは、小池知事会見で指名回数第1位のフジテレビの小川美那記者が書いた署名記事「『総理との関係はいい』『GoTo東京』急転直下の裏には菅・小池両トップの『ホットライン』」(12月2日のFNNプライムオンライン)を読んでいたからだ。不仲説を否定する記事内容だったので、「仲直りをしてこの程度の対策か」という疑問を呈示したのだ。

 ちなみに、小川記者は「都知事会見指名回数順位(小池知事“お気に入り記者”ランキング)」の第1位。2020年6月16日公開の本サイトの記事「【都知事選2020】都知事会見指名回数第1位のフジテレビ・小川美那記者を直撃取材〈動画〉」でも紹介したが、菅・小池両トップの決着内容(高齢者と基礎疾患のある人への自粛)について「全世代を対象にすべきだったのではないか」と小池知事を問いただすことは一度もなかった。

 両トップの関係が良好なのに、なぜ高齢者と基礎疾患がある人に限定した“小出し対応策”しか出てこなかったのか。こんな素朴な疑問すら、小川記者は浮かばないようなのだ。

 結局、GoToトラベルが東京着発を含めて停止となったのは年末。11月20日の尾崎会長の“直訴”から1カ月以上も経った遅すぎる決定が感染爆発の主因といえるのだ。責任のなすりつけ合いで時間を浪費した菅首相と小池知事を“A級戦犯コンビ”と名付けたのはこのためだ。

 なお『デフレの正体』『里山資本主義』の著者で、日本総合研究所主席研究員の藻谷浩介氏も、「新型コロナへの対処 感情の前に事実把握を」(12月6日付の毎日新聞)のなかで、東京除外解除が第三波感染拡大の主因であり、両トップの急転直下の決着(高齢者と基礎疾患がある人への自粛)は的外と批判していた。

 「今回の感染再々拡大は10月後半から起きており、その半月前の10月初頭に東京都を(GoTo)キャンペーン対象地域に加えたことの影響は明らかだろう。他方で7月下旬に東京都を外して開始した際には、逆に半月後の8月上旬から新規陽性判明者が顕著に減った。つまりGoToそのものの実態ではなく、東京都を対象に入れるかどうかがカギだったのだ」(12月6日付の毎日新聞)。

 医療関係者の訴えに耳を傾けず、「やっている感」演出に精を出す両トップに対しては、今後も厳しい目を向けていく必要がある。

【ジャーナリスト/横田 一】

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