2024年12月24日( 火 )

1954年の政権交代から学ぶ

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「小選挙区制下の選挙では、野党陣営の結束が必要不可欠。野党共闘を分断する試みは、与党勢力の作為を背景にするものと見て間違いない」と訴えた6月9日付の記事を紹介する。

2人ぶりの党首討論が行われたが糠に釘。
質問したことに正面から答えない首相が相手では討論の意味がない。
ぬらりひょん。

国民が東京五輪開催に反対しているのは五輪開催が事態を悪化させる可能性が高いから。
この可能性を封殺する方策を示さずに「国民の命が最優先」と言っても通用しない。

5万人から8万人の外国人が入国する。
位置確認にGPSを活用するとしているが、誰がどのように監視し、ルール違反に具体的にどう対応するのか。
これが明確でなければ実効性が確保されない。

「ID剥奪を含む厳しい対処をする」と表現しても、
「IDをはく奪して強制送還する」
と断言しなければ、あいまい対応になる。

これまでに入国した五輪関係者に対して、入国後の待機命令が免除されていた。
そのなかから、コロナ陽性者が確認されている。

すでに「バブル」は崩壊している。
日本の入国時の検疫体制がザルであることは周知の事実。
通常の手続き免除となれば、検疫体制が存在しないにも等しい。

世界からコロナ変異株が持ち込まれる。
その外国人と接触する多数の日本人が存在する。
この日本人をバブル方式で隔離するわけではない。

全国各地に入国外国人が移動する。
変異株は確実に日本全体に持ち運ばれることになる。

コロナ感染は4、5カ月ごとにピークを形成してきた。
今回ピークは5月12日だったから、次回ピークは9月から10月になる可能性が高い。

変異株はN501YからL452RないしE484Qに入れ替わるのではないか。
日本政府のコロナ変異株に対する対応も遅い。
N501Yが感染の中心に移行して久しく、いま求められているのはL452R、E484Q変異株に対するサーベイランス。
この対応が極めて遅い。
変異株が日本人の免疫能力をすり抜けること、変異株がワクチン有効性を引き下げること、が懸念されている。

ワクチン接種進捗による集団免疫獲得には時間を要する。
感染第5波は集団免疫獲得前に生じる可能性が高い。
国民の命と健康を奪うリスクが明確に存在する。

だから、この被害を回避するために五輪を断念することが妥当というのが日本の主権者の判断。
これを踏みにじって五輪開催を強行する理由を示し、日本の主権者国民が納得することが必要だ。

ところが、菅首相は、これらの質問に答えない。
「国民の命が最優先。
しかし、五輪を開催する。」の1点張り。

五輪開催を強行しても感染拡大を招かないことを科学的裏付けをともなって示すことが必要。
何の根拠も示さずに、ひたすら「安全・安心の五輪開催を目指す」と繰り返すだけでは、下等な詐欺師でしかない。

五輪開催を有観客にすれば、大規模な人流が発生する。
実質的GoTo再開だ。

人流拡大がマスクなし会食機会を増大させる。
マスクなし会食機会増大が感染を拡大させる。
五輪開催強行、有観客強行の結果は目に見えている。

国民の不安と懸念に答えない菅義偉氏は宰相失格。
厳罰が必要だ。
菅義偉氏が五輪開催強行に突き進むとき、厳罰を与える場になるのは次の衆院総選挙。
ここで菅義偉氏を断罪することが必要不可欠だ。

このまま進めば衆院総選挙は9月になる。
菅内閣が五輪開催強行に突き進む場合、次の感染拡大の大きな山が9月から10月に形成される可能性が高い。

7月の人流拡大と変異株流入が感染爆発の起爆剤になる。
変異株はより強毒化し、ワクチン耐性を強める可能性が高い。
この感染第5波が衆院総選挙と重なることになる。

「禍福はあざなえる縄の如し」というが、6月の新規陽性者数減少が菅内閣にとってのあだとなる。
菅内閣の暴走が9月総選挙での与党逆風として作用する。
菅内閣終焉が大いに期待される。

問題は野党の対応。
反自公が1つにまとまることが必要不可欠だ。
立憲民主党の枝野幸男氏が共産党を含む野党共闘確立の方針を明確に打ち出さない。
この優柔不断さが悲劇を招く原因になる。

話は遡るが、1954年12月に鳩山一郎内閣が樹立された経緯を振り返ることも重要。
51年8月に公職追放を解除された鳩山一郎は52年10月の衆院総選挙で衆議院議員に復帰をはたす。

公職追放が解除になれば権力を返すと約したはずの吉田茂が権力に執着した。
53年3月、吉田、鳩山による党内抗争の果て、吉田茂の「バカヤロー解散」に至る。
鳩山一郎は分党派自由党を結成して総選挙に臨む。

4月の第26回総選挙で吉田自由党は過半数割れに追い込まれた。
このとき、野党が結束していれば吉田内閣を退場させることができた。
しかし、野党は1つにまとまらず、第5次吉田茂内閣が誕生した。

鳩山一郎は53年11月、分党派自由党を解党し、自由党に復党した。
鳩山一郎の政治生命は絶たれたかに思われた。

しかし、「天網恢恢疎にして失わず」である。
吉田内閣は造船疑獄事件に直面。
54年4月、犬養健法相は指揮権を発動した。

吉田内閣が弱体化するなかで鳩山一郎は9月に日本民主党を創設。
12月に内閣不信任案が提出されると、ついに吉田内閣は総辞職に追い込まれた。
12月9日の首班指名で鳩山一郎が内閣総理大臣に指名されたのは、左派、右派の社会党が鳩山一郎に投票したからである。

日本民主党が結成されたとき、多数勢力を有していたのは改進党だったが、改進党の重光葵総裁は新党総裁の座を鳩山に譲った。
また、鳩山の再軍備方針に反対する社会党左派が首班指名で鳩山に投票したことも特筆される。

これらの点は小宮京氏の論考に詳しい。
https://bit.ly/2Tav3OU

政権刷新という大業を成就するには越えねばならないハードルがある。

菅首相は国民の命を犠牲にして、自分の政治的利益のためだけに、五輪開催強行に突き進む。
五輪を開催し、自民党総裁選、衆院総選挙を乗り切ることが目指されている。
国民を犠牲にして自己の利益増進を図る人物を宰相の地位に留め置くことは許されない。

日本国民は総意によって菅首相の退場を求めるべきだ。
そのために、共産党を含む共闘体制の構築が必要不可欠。
圧倒的多数の立憲民主党候補者は共産党の支援なくして衆院総選挙で議席を確保できない。

共産党が暴力革命を掲げているならいざ知らず、共産党の主張は日本政治のひずみを正す正論ばかりだ。
政策連合を構築し、大同団結で次の衆院総選挙に臨むなら、日本政治刷新を実現できる。

小選挙区制下の選挙では、野党陣営の結束が必要不可欠。
野党共闘を分断する試みは、与党勢力の作為を背景にするものと見て間違いない。
枝野氏が野党共闘に背を向けるなら、枝野氏を排除することが先決になる。


▼関連リンク
植草一秀の『知られざる真実』

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