2024年3月11日 18:00
「井坂君、厄介なことになったよ」 井坂を専務応接室に呼び、杉本が冬には不似合いなゴルフ焼けの顔をゆがめたのは年末も押し迫った12月の半ばだった。
2024年3月10日 06:00
大手企業の支店経済都市ともいわれるF市だったが一方では地場の企業でつくる親睦会や県下の経済団体を結んだ連絡会があり、それぞれが地域振興という旗のもと自尊と利権を支え合っていた。
2024年3月9日 06:00
そんな犬飼が思いがけないミスをしたのは、井坂にそろそろ役員の声がかかろうかという時だった。井坂の同期に永木修という男がいた。
2024年3月8日 18:00
どちらかというと個性派の少ない西日本総合銀幹部のなかで井坂と杉本はいささか異質だった。明るく豪快な杉本と緻密で仕事熱心な井坂。人脈として利用するには悪くないコンビだった。
2024年3月6日 18:00
食べるに事欠くというほどではなかったが、豊かさとはほど遠い農家の三男に生まれた井坂だった。兄2人はそれぞれ優秀で上の学校に行く準備と称して、家の手伝いをすることはほとんどなかった。
2024年3月3日 06:00
短い石村と別れの挨拶後、車に乗り込むと井坂は自宅に向かうよう福井に告げた。「天下りか・・・」井坂は冷めた思いのなかで呟くと10数年前のある出来事を思った。
2024年3月2日 06:00
「結構長いお話でしたね?」 会長室を出ると廊下の端に石村が立っていた。「ああ、君はずっとここにいたのか? そりゃご苦労だったな」
2024年3月1日 18:30
加藤達雄。元大蔵省関税局長。10年ほど前、大手航空会社を経て西日本総合銀行に天下り、会長を経て頭取になり2期4年を過ごして再び会長の職に戻っていた。
2024年2月29日 18:00
料金所を出ると10分ほどで、西日本総合銀行本店に着いた。いかにも銀行然とした居丈高な茶色のビルを見上げながら、車は大通りから二度ほど左折して、幹部行員専用の通用口で停車した。
2024年2月28日 18:20
九州道から都市高速に分岐した辺りで風景が薄暮に溶け始めた。国際線の誘導灯が冷え切った空気を通して視界に明滅する。
2024年2月27日 18:00
K市に本部がある地場大手小売業の朱雀屋は時代の変化への対応が遅れ、厳しい経営環境にさらされていた。